fc2ブログ
人間せんせいには以前登場した兄がいますが、
まだ1度も登場していない、弟もいます。

人間せんせいは、この弟を2度見殺しにし、
その後反撃に出られて、1度見捨てられました。
そのうちの第1話です。

人間せんせいは兄の後について遊び、
また、弟も人間せんせいの後をよくついて回り、一緒に遊びました。
その日もそうでした。
人間せんせいが6.7才、彼は3.4才くらいだったと思います。

当時は今ほど公園が整備されていなくて、子供たちは道路で遊んでいました。
車もそんなに来ませんでした。
いつも遊んでいる縄張りのその向うに、急な坂がありました。
今見れば、全く急ではないのですが、
子供の目にとっては、とても急で、魅力的な坂でした。

人間せんせいと仲間たちは、補助輪が取れたばかりの自転車で、
その坂の一番上から下まで、一気に走り下りたいと、
いつもあこがれに近い思いでいました。

ある時は大人たちにダメと言われ、
ある時は工事中だったり、
ある時は、仲間の誰かが、しり込みしたりして、
なかなか実現しませんでした。

そして、ついにお膳立てがそろい、
人間せんせいと仲間たちは、坂の上に集結することになりました。
ところが、弟が、自慢の三輪車でのろのろついて来ます。
まいてもまいても、いつの間にかいます。

仕方ない、一枚かませることにしました。
「ママに言っちゃ、ダメだよ。」

男の子たちから一人ずつ、この憧れの坂を、自転車のブレーキをかけずに走り下りました。
成功した子は、顔を高潮させ、興奮して、そして、誇らしげでした。
自分の番を待っている子は、半分わくわく、あとの半分はどきどき、といった表情でした。

誰も決めはしなかったけれど、
ある種の儀式、肝試し、という思いがみんなの中にありました。
集団ヒステリー的な興奮状態の中で、
人間せんせいも走り下り、感動を分かち合いました。

さて、この興奮状態は、生まれて3.4年しか経っていない人間にも伝わるようで、
弟は、自分もやるといって聞きません。
人間せんせいでさえ、目をつぶって勇気を奮わないと、スタートが切れなかったのに、
この子は、今にも鼻血を出しそうなほど興奮していて、
三輪車を押して、坂のてっぺんに登っていきました。

「やめたほうがいいよ。」
「あぶないよ。」
年上の中にいると、ちびすけは、そう言われれば言われるほど、ムキになるものです。
ますます鼻の穴を膨らませて、弟はスタートを切りました。

顔を真っ赤にして、髪の毛を逆立て、すごい形相で下りてきます。

三輪車というのは、実に軽いものです。
片手でひょいと持ててしまいます。
ブレーキもついていません。
弟の乗った三輪車は、そのスピードと、風の抵抗にあっけなく敗れ、
左へどんどん曲がって、途中弟は放り出され、三輪車は電信柱に激突しました。
ちびすけは、すごい形相が固まったまま、鼻血を出して、大泣きしました。

まるでマンガのような展開に、人間せんせいは、しばし、笑ってしまいました。
なぜすぐに駆け寄らなかったのだと、
こんな年月が経っても、弟はまだ根に持っています。
何かの集まりのたびに人間せんせいは、弟を見殺しにした、極悪姉だと、ののしられます。

大人達が知らなかったところで、秘密裏に子ども達は様々な経験を重ね、
絆創膏を貼ったり赤チンを塗ったりしながら、危険の度合いを体得していきます。
いい時代だったのか、
それとも、やっぱり、ぞっとするような出来事で、極悪姉だったのか・・・

きょうは彼の誕生日。
ちびだった弟も今はおじさんになり、
そろそろ娘にもそっぽを向かれ始め、うなだれています。
実家へ行く日なので、近くに住む彼に、本でもプレゼントしましょう。


shell09.jpg


kuronekoline.gif

2010.07.05 


Secret