「お帰り・・・」
耳元で囁く夫・貫太郎の声で、人間せんせいは意識が戻りました。
驚いたことに、すでに病室に戻っていました。

手術が終わり、麻酔器具を外され、名前など呼ばれて返事をし、
正常に醒めたと判断されて病室に戻ったのでしょうが、
それらの記憶はありません。

素晴らしきかな、全身麻酔。
酸素マスクがずれているとさっきストレッチャーの上で騒いだはずが
もうすべてが済んで病室です。
華岡青洲先生と奥様お姑様に、感謝感激雨あられです。

麻酔は口に器具を装着して気管から行うそうですが、
そのせいでしょう、喉がカサカサでした。
貫太郎と二言三言話してすぐまた眠りに落ちました。

翌朝は、まだ点滴につながれカテーテルが入っていたので
朝食はベッドまで運んでもらいましたが、
午前中にカテーテルが外れるともう自由~~♪
お昼ご飯は自分で取りに行き、
手術から24時間経たないうちにふらふら歩きまわって、
お見舞いに来てくれた友人とラウンジでおしゃべりもしました。

同じ日に手術をしたあとの2人も同じように元気で、
「不思議よね、どこも痛くない・・・」と
3人で想像以上に早い回復を喜びました。

どこも、ひとつも痛いところはなく、記憶もなく、
本当に手術は行われたのだろうかと半信半疑の感覚、
でも、胸に手をやるとごっそり削れてて、
そっか、夢じゃないんだ・・・といちいち確認するほどでした。

腋の下方、肋骨の下辺りに小さな穴があり、
そこからチューブが出てて、先にパックがぶら下がっていました。
切ったところから血液や体液などが出るそうで、
パックの中身が一日に50cc以下になったら
このドレーンは抜けて退院できるそうです。
いえ、ドレーンごと今すぐに退院してもいいそうでしたが、
のんびり安静にするためにみなさん1週間程は入院するそうです。

翌日から朝起きると東側へ行って朝陽を窓越しに浴び、
朝食まで缶コーヒーを飲みながら文庫本を読み、
朝ご飯と昼ご飯の後には、
第一病棟、第二病棟、第三病棟、外来の建物、病院中の階段を
一番上まで行って降りてきて、地下で一日分のお茶、
ペットボトル3本を右手に持ち、左手に持ち替え、
退院してからすぐに仕事に復帰できるように動き回りました。

でも、どこも何にも痛くないので、リハビリをしている感覚はなく、
ふらふらと散歩をしている気分です。
仕事も家事もしないで、ゆっくり本が読め、
大好きなナンプレも次々制覇し、
友達とおしゃべりをしてお見舞いのケーキを食べ、
そんなこと1週間もして、
私、本当に病人なのかなぁ・・・???


手術前から、なんの症状もなく、
ただ、ひとが聞けばどう返事をすればいいかわからないというような、
深刻らしい病気を得た、でも、らしい、だけで、
本人にその自覚が最初からあまりないのは、
この特異な性格のせいなのでしょうか?


さて、手術後の病理検査で、
みっちゃんはステージ0、
最初に言われたように切除をもって治療は終了。
ところが、さっちゃんは、なんとほんの一部浸潤が始まっており、
ステージは1になっていました。
前の病院で一郎先生が「良性」と診断した方です。
良性が悪性に変わることはないと、
一郎先生はその後1年近く、一度も診ませんでした。
一郎先生のばか!

みっちゃんとさっちゃんとでは、病変の性格が違うようで、
みっちゃんの方はおとなしい性格、乳管の中に引きこもったまま。
さっちゃんの方は、それよりも活発で、
しかも、マンモには映るのに
エコーでは見つけるのにコツがいるようなところに隠れているらしく、
悪党の性格を持っているようです。
こいつの方はすぐに退治しなくてななりません。

リンパ腺には関所のようないくつかの節があり、
乳ぽんがリンパヘ転移するには必ず通る場所があるそうです。
それで、切除手術の際にはその第一節を採って検査をし、
そこをぽん細胞がすでに通過していれば第二節を検査というように
通った細胞の後を追いかけていくつか節を検査するそうです。
この追跡のために、手術当日の痛い注射で造影剤を入れたのでしょう。

で、人間せんせいのは最初の第一節を調べたら
通過していないのでリンパヘの転移はなし、ということです。

さっちゃんもステージが0のままだったら、
ぽん細胞は乳管の中だけにひきこもっているので、
乳管を切除してしまえばこれでひとまず終わり、だったのに、
やんちゃな奴が家のドアを開けてふらふら歩き回ると、
それがまた別の場所に棲みついたりしたら
新たなぽんの発生ということになってしまいます。
さっちゃんのは、ドアを開けた奴がほんの少しいるよということなので、
奴らのえさになる女性ホルモンを取り上げて餓死させてしまおうと、
人間せんせいは女性ホルモンを作らないようにするお薬を飲みます。


2016.09.29 
おばあちゃんのことやねこ隊のこと、
書くことは山ほどあれど、なかなか時間が取れません。
これからもっとできなくなりそうなので、
ほんの少しずつでも、まずは病気のその後について記録しておきましょう。

初めてのことはたいていわくわくどきどきします。
そして、後には学ぶことがたくさんのお土産になります。

世の中には難しい病気と向き合い、
日々一生懸命に戦っている方々がたくさんいて、
人間せんせいにとっての初めての大きな病気、初めての入院・手術を、
冒険などと感じるのは、不謹慎なことかもしれませんが、
このへらへらした性格がもたらすごく個人的な感想として記録します。

さて、もう3か月も経ってしまいましたが、手術の前日から。
え・・・そこから書くのかい?
そりゃそうです。
記録ですから。

病気のことはお医者様にお任せするしかありませんから、
たいして不安もなく、旅行へでも行くような気軽さで前日に入院しました。

着いたそうそう、真昼間からパジャマに着替えるなど違和感満載でしたが、
手術前には説明を受けたり、口腔外科検診があったり、入浴したり、
患部にマーカーで印をつけたり、けっこうバタバタ。

エコーで診ながら患部にマーカーをつけるのですが、
「この症例はテストに出る典型的なもの、間違えやすいからよく見るように。」とか、
「この角度からのアプローチだと見つからないが、
ここからだと・・・・ほら、見つかった。」
「際の良性との判断が難しい。」などと、
若い先生もみなさん勢ぞろいで、部長先生がご講義。
見えているのはモニターの画像であって、
患者はそこにはいないようなやりとりでした。

いいのいいの。
これからの医療を支える先生方のお役に立てるなら、
右胸みっちゃんも左胸さっちゃんも本望でありましょう。

そのあと、手術の方を記したカードとともに顔写真を撮ります。
手術部位や患者そのものを取り違えないように。
人間せんせいは右と左、2枚のカードを持ちました。
う・・・囚人のようだ・・・そう、冗談で言えるほどの感情、
不思議なくらい不安も緊張も恐怖も悲しさもありません。

そうこうしているうちにもう夕食、
そして就寝準備をしているうちにもう9時の消灯。
いつもならまだ仕事をしている時間です。


この病院の乳腺外科では週に2回の手術日、
1日に3人、週に6人、年間で300人の手術症例があります。

手術当日は朝いちに患部に注射を打ちます。
特殊な染料が体内に広がり造影剤となって撮影されるそうで、
今回の入院・手術治療の中でこれが一番痛いのだとか。

そう、これがほんと、半端なく痛い~~っ
しかも、みっちゃんとさっちゃん、
人間せんせいは人の倍です。ううううう。

人間せんせいはこの日3人目の手術、14時予定でした。
手術中の脱水を防ぐため、
また、どのくらいの水分が体内に入っているかで麻酔に影響があるとかで、
前夜から水分を管理されていました。
19時から21時までに500ml
起床時から7時までに250ml
7時から11時までに750ml
言われたとおり、ちゃんと飲み切り、準備万端。

手術着は肩にスナップがあり、ベッドに寝ると
上だけ取るとか下だけとかできるようになっています。
けっこう厚手の、ぞろっと足首まで長い術着を着て、
14時まわってから自分の足で病室を出て手術室に向かいました。

直通のエレベーターのドアが開くと、
ホテルの出迎えのように、数人のスタッフが並んでいました。
すぐに車いすに座らされ準備室とやらに連れていかれます。
初めての冒険ではありますが、後にトラウマになるのも嫌なので、
目をつぶって手術室の様子は見ないでおきました。

車いすから自分でストレッチャーに乗り、
毛布を掛けられた下で、術着の上半分が取られて
酸素マスクがかけられました。
ところが、酸素マスク、人間せんせいの鼻から少しずれています。
麻酔が漏れて効かなかったら大変!!

『ずれてます!ずれてます!』と騒いだら、
「これは適当でいいんですよ~」だって。

と、記憶はここまで。

どこからやって来たのか、
鼻からか、腕の点滴からか、わかりませんが、
どこかから麻酔がやって来て、人間せんせいは眠りに落ちました。


ところで、
手術日には患者3人を執刀だそうですが、
予定ではひとり1時間半くらい、
30分おいて次の人、また1時間半くらい。
人間せんせいの場合は両胸なので、2時間半の予定でした。
切ったり貼ったり、患部は計4つなわけで、
両胸の患者が続けば、計6つなんて場合も?
それって、お医者様のお手当はどうなるのでしょう?
2倍かな?

お医者様方、病理検査の方々、
2倍もお手数をおかけしました。








2016.09.26 
今度はこいつと






こいつが

P1170476s.jpg


脱走




はちわれのたっくんに至っては、無断外泊、
2泊目の真夜中に堂々、玄関から帰宅する始末。



なんで次々と脱走が続くのかというと、
おばあちゃんがこの夏はずいぶんと「ゆるゆる」してきたからです。

開けっ放しの扉からねこ隊がおばあちゃんちの部屋へ入り、
開けっ放しの掃き出し窓から喜々として外へ出るルートが
彼らの口コミで広がっている模様です。

どげんかせんといかん


************************************************************

お持ち帰り用 千の風2016 画像ファイル

拙いものですが、ご希望の折はどうぞお持ちください。
Jpegファイルで圧縮してありますが、
はがき程度の大きさには印刷確認済みです。



千の風2016の キュウリのファイル


千の風2016 おナスのファイル

2016.09.11